ビリヤードの物理学 ~壁の高さの理由~

By b_kimura,

  Filed under: 物理学ってつまらない
  Comments: None

biri

※ (株)プロトン・スズキ寄稿

みなさん御存知でしょうか。ビリヤード台の壁(サイド)が特殊な形をしていることを。
biri
こんななってます。内の方は玉とかグリーンとかあるほうです。
なんでサイドが平らになってないのでしょうか。

壁の出っ張りの高さを測るとこから始めたのですが、ここはボールと接触するために
勿論ボールの直径も大きく関係してると思ってボールも計測を。
ノギスを拝借してきて(ノギスとは0.05㎜まで正確かつ簡単に測定できる機械)
それを店員に怪しまれないようにこそこそ測ってみました。ノギスとはこんな物です

nogisu
cf. wiki

台を測るために固い紙とペンを持って行って印をつけて
それからノギスでその紙書いた印を測りました。
実際にビリヤード場でやったのはこれだけ。後は机の上で。

まず玉の半径をaとして、キューで玉を突く高さを、玉を突く力をFとおく。
当然、床に転がる時に玉との摩擦が考えられます。その摩擦力をとおく。
また玉の重心速度(簡単に言えば玉が転がる速さ)をとおく。
あと必要なのは玉が回転する速さU
Uは玉の半径と角速度ωできまるので U=aω

角速度とは一秒間に何度回転するかということ。(正確にはω=dθ/dt)
すなわち一秒間に30度回転するとしたら π/6(rad/s)←radは表記的なものなので気にせずに。

もし玉の重心速度が玉が回転する速さより大きかったら、摩擦は後ろへ。
逆によりも大きかったら摩擦は前(進行方向へ)

何故こんなことがいえるかというと、玉と床の接点をPとおいてみるとPにおける
速さは玉が進む速度と玉が回転する速度によって決まるから。
これは自分の手でワッカを作ってどっち向きに摩擦がかかってそうか調べてみてください。

重心の並進運動 M*du/dt=F  M=玉の質量
重心周りの並進運動 dL/dt=N L=重心周りの角運動量、N=重心周りのトルク

L=Iω 慣性モーメント:I=2/5*Ma^2 (慣性モーメントは三重積分して計算が面倒なので暗記が必要)
∴ I×dω/dt=N (左式の×は乗算ではなく外積)

①  まずキューによる力Fを考える
M*du/dt=F ・・・(1)
    (1)の両辺を積分
M∫【0→Δt】du/dt*dt=∫【0→Δt】F(t)dt ・・・(2)

   (2)の左辺はΔt秒後の玉の速さvで右辺はキューによるΔt秒間の力積Sなので
 v(Δt)=S/M  ということになる。

②  次に重心周りのトルクNを考える
N=(h-a)F ←(h-a) はFの腕の長さになる。
I*dω/dt=N ・・・(3) 定義式
    (3)式の両辺を積分する
I∫【0→Δt】dω/dt*dt=(h-a)∫【0→Δt】Fdt ・・・(4)
    (4)の右辺はΔt秒後の角速度ω(Δt)で右辺は力積Sになる
∴ Iω(Δt)=(h-a)*S
 ⇔ ω(Δt)=(h-a)*S/I I=2/5*Ma^2

上のほうで書いたv-aωを①、②で出したものを代入してみましょう。

v-aω(Δt)=S/M-2/5*h-a/Ma*S
     =S/M[1-2/5(h/a-1)]
      =S/M[7/2-5/2*a/h]

興味深い結果が出てまいりました。
v-aω(Δt)=S/M[7/2-5/2*a/h]
先ほど上のほうで手でワッカを作ってやってみましたか?

v-aω(Δt)>0
すなわち摩擦が(進行方向右で)左側にかかるときは h/a<7/5
逆に、
v-aω(Δt)<0
摩擦が右側にかかるときは h/a>7/5
そして、
v-aω(Δt)=0
このとき玉が床を滑らずに 転がり h/a=7/5 ⇔h=7a/5

おお!これは!
hというのはキューで玉を突く位置、aは玉の半径。
ということは半径aの玉なら 7a/5 の位置を叩けば玉は摩擦による運動エネルギーの損失が無く
自分の打った力そのままで玉を転がせる事ができるはず!
これは当然ビリヤードの壁も7a/5になっているのではないか!?早速検証してみると・・・

壁の高さと玉の直径を書いた紙を多分ビリヤード場に忘れた…orz

でも多分、壁の高さも玉に無駄な回転がかからないように7a/5になっているはず・・・。
もしこれからビリヤードに行く方いらっしゃいましたら、
手玉の真ん中の上の2/5くらいの位置を突いてみてください。
きっと床を滑りながら回転せずに綺麗に回っていることでしょう。
そして壁にぶつかった後の玉も変なスピンがかからずに綺麗に回転していると思います。