永久機関の物理学 ~熱力学とエントロピー~

By b_kimura,

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※ (株)プロトン・スズキ寄稿

たまに超有名新聞社が、永久機関とうとう発見か!という報道しているのを見ると何とも悲しい気持ちになります。

そもそも永久機関て何?

・第一種永久機関
熱力学の第一法則エネルギー保存則に反するもの。すなわち、外部からエネルギーを加えず、永遠に稼働するもの。この場合、無からエネルギーを取り出すことになる。
・第二種永久機関
熱力学の第二法則エントロピー増大の法則に反するもの。損失なしにエネルギーを移すことによって、周囲から動力を取り出す。すなわち、エネルギー変換効率100%の機関。

とのことですが、何とも分かりにくい説明ですね。
というわけで、簡単に説明してみます。

第一種永久機関

飲まず食わずで人間は働けない、ということです。そのまんまです。
何か仕事をしようとすると、必ず何かしらの燃料がいります。PCも携帯もバッテリーが無ければ動きませんよね。
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第二種永久機関

発電所の(水蒸気でタービンを回して作った)電気を使って工場の機械を動かします。
工場のその機械はひたすら水を温めて水蒸気にします。
そこで作った水蒸気を再び発電所に送って、最初と同じようにタービンを回して発電して…と以下無限ループ。
これは出来ないよ、という法則です。
発電所の電気によって動いている機械は、その供給された電気と同じ若しくはそれ以上の能力は得られません。
必ず、供給された電気未満の能力しか持たないのです。
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人間に例えると、どれだけ運動神経が良い人が居ても食べたご飯(受け取ったエネルギー)と同じだけ、若しくはそれ以上の仕事はできない、ということです。

何となくは分かっていただけたかと思います。
つまり、どんだけ頑張っても永久機関ってのは出来ないのです。変な新聞記事に騙されないようにしてください。

エントロピー増大の法則

エントロピーという言葉自体は、常日頃から使われている言葉ですね。
巷でよく使われる意味は、必ず時間によって乱雑な方向に進んでいく、でしょう。
例えるとコップにインクを垂らすと必ず拡散する方向に進み最終的に一様に混ざって元には戻りません。
でもコップ内の水分子やインクを構成している分子はランダムに動くため、もしかしたらインクの分子だけが一点に集まりインクを垂らした瞬間に戻るかもしれません。
でも、その確率って宝くじが当たるより遥かに物凄く小さいので、基本的には不可能だよね、じゃぁ法則にしてもええやん?てことです。

ただし、エントロピー増大の法則を扱う際には注意が必要です。
例えば、汚い散らかった部屋(エントロピーが高い状態)を掃除すれば、綺麗な部屋になります(エントロピーが低い情報)。なんと、宇宙の法則が乱れたゾ!なんてことにはなりません。
部屋を掃除した人は、何故掃除が出来たのかを考えてみましょう。
まず、体を動かすために腹ごしらえ、満腹になったところで手足を動かして、物をきちんとした場所になおしてあげる…これだけの過程ですが、そもそも体を動かすためには食事をしなければ動きません。外部からエネルギーをもらっています。
さらに、エネルギーをもらって体を動かすと熱が発生します。体温がその一つです。
また、そのうちトイレに行きたくなるはずです。

この一連の流れを熱力学的に捉えてみます。
食べ物を食べて(エネルギーを供給)部屋の掃除をします(部屋のエントロピーを下げる仕事をする)。
その内、汗をかいて体温があがり(人体から熱が発生し)最終的に部屋が片付きました(部屋のエントロピーが最低まで減る)
無事に部屋は片付いたので部屋自体のエントロピーはさがりました。
しかし、ただで部屋のエントロピーを下げられたわけではなく、まずエネルギーを供給してもらい、そのエネルギーを使って仕事をすると人から熱(老廃物)が出ます。
部屋のエントロピーを下げるために発生した代償(増えたエントロピー)の合計を考えると、全体としては結局エントロピーは増えてしまっていることになります。
これがエントロピー増大の法則です。
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というわけで、エントロピーを考えるためには、影響がある系全体を捉える必要があります。

エントロピーと永久機関

急にエントロピーの話が出てきてとまどいを隠せないと思いますが、ここからやっと繋がります。
熱力学第二法則って言いかえるとエントロピー増大の法則なんです。(色んな言い方があります)
つまり、経験的に我々はインクが拡散して元に戻らない事を知っているはずですが、それは科学的にも確率が高い方高い方に物事は進んでいくよって話なんですね。
これはどれだけ技術が発達しても抗えない法則で、科学技術によって50℃のお湯を0℃と100℃に分けて、高温の水をお湯から創り出し高いエネルギーを得たとしても、0℃と100℃に分けるのに必要なエネルギーの方がもっと高くついちゃうわけです。

どれだけ部屋を片付けても、どれだけクライアントが抱える複雑で困難な現状を整理して打開しても結果的には乱雑さは増すばかりです。
悲しい事実です。