クローズアップ現代|ポエム居酒屋甲子園。そこにはブラックな居酒屋業界の実態があった

By b_kimura,

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2014、1/14放送の、クローズアップ現代「あふれる“ポエム”?!~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」が話題になっています。

放送内容はこちら。

クローズアップ現代「あふれる“ポエム”?!~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」

クローズアップ現代「あふれる“ポエム”?!~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~」

居酒屋、介護士、トラックドライバーなどの業界で、「甲子園」と呼ばれるイベントが人気だ。「夢をあきらめない」「みんなを幸せに」…どれだけ言葉が心を打ったかを競い合う。

震災以降、こうしたシンプルで聞き心地のいい言葉の多用が、若い世代のみならず、広告宣伝や企業の研修、そして地方自治体の条例など公共の言葉にも広がっているとして、社会学者や批評家らが「ポエム化」と呼んで分析を試み始めている。共通する特徴は、過剰とも思える優しさ・前向きな感情の強調だ。

この風潮を特に支持するのは、「年収200万時代」の低収入の若者層と言われるが、厳しい現実を生き抜くために現状を肯定しようとする傾向が年々強まっているとされる。「ポエム化」の現場を通し、社会で何が進行しているのかを考える。

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No.3451 2014年1月14日(火)放送
クローズアップ現代
あふれる“ポエム”?! ~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3451.html

書き起こされたのはこちら
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3451_all.html

居酒屋甲子園などの「○○甲子園」で業界ナンバー1を競う大会。
そこには、ポジティブな想い(ポエム?)を涙ながらに叫ぶ若者と、激しく共感してもらい泣きする若者が映っていました。

「夢はひとりで見るもんじゃない、皆で見るもんなんだ!」「人は夢を持つから、熱く、熱く、生きられるんだ!」と語っていたのは、長時間労働かつ年収200万円代の若者。

ポエムが書かれた給料袋を見て「これで来月も頑張ろうって思える」とクマが目立つ、やつれ顔。

現実から目を背けるような曖昧できれいごとを並べたポエムが利用され、「やりがい」や「成長」を対価に、過剰労働を強いている業界の紹介が番組の主な内容です。けれども、ゲストのコメンテーターは色々言っていましたが、メインキャスターは直接的な批判を行っていませんでした。番組自体は「こういう現状があるようです」という具合に事実のみを伝える立ち位置でした。

ただ誰が見ても異様に感じる雰囲気の甲子園。夏の甲子園より熱い。。
案の定、Twitter等のSNSでは、「こわい」「気持ち悪い」「洗脳みたい」という言葉が飛び交っています。

これだけなら「サービス業こわいね~」で終わったのでしょうが、居酒屋甲子園の主催団体であるNPO法人居酒屋甲子園がWebサイト及びfacebookで「お詫び」を発表し、炎上。

NPO法人居酒屋甲子園さんは、どうやらこういう形で取り上げられることを知らなかったようです。

報道に関するお詫び

平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
2014年1月14日(火)NHKより放送された「クローズアップ現代」の件で居酒屋甲子園の思いが伝わらず沢山の方々に不快と感じられる報道がありました。

<取材までの経緯> 
・NHK様より頂いた依頼文 ※依頼部分抜粋
現在、クローズアップ現代で1月の上旬を目指して、いま日本社会の様々な現場で生まれている広告、条例、企業の社訓・クレド(信条)などの「熱い言葉」の現場を訪ね、その背景にあるものを探る特集を組みたいと考えております。そのなかで、従業員の離職率の高さに悩むサービス業界で、いま●●甲子園という大会が広がっていること、さらに各店舗さんの企業理念や個人理念でも詩的な言葉を導入されている様子を取材しております。低温世代といわれる若者たちのこころをどう動かすか、その取り組みの様子を取材しております。何卒ご協力のほどをよろしくお願いします。

・居酒屋甲子園理事会
上記依頼内容を理事会で検討し、居酒屋の素晴らしさや働くことの尊さなどを伝えられると感じ協力を致しました。

当団体では、業界の地位活性化を目的とした活動を行っておりますが、若者をごまかすための言葉遊び(「ポエムの力で説明放棄」「何かを隠蔽する」等々)であるような報道がありました。このような報道になったことは誠に残念であります。

居酒屋甲子園に参加頂いた参加店舗様およびサポーター企業様、業界活性化の他団体の皆様、関係者の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けすることになりましたことを、心からお詫び申し上げます。

略儀ではございますが、取り急ぎ書面にてお詫び申し上げます。
今後の対処に関しては、現在協議中です。早急に対処できるよう努めてまいります。どうか今後とも変わらぬご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

NPO法人居酒屋甲子園
理事長 山根浩揮

http://www.izako.org/releases/view/00124

要するに、「関係各所のみなさん、こんなはずでは無かったのです、聞いていた話と違ったのです、すみません。」ということですね。

しかし、NHKが送った依頼文の内容に、嘘は決してないように思えます。NHKがはじめから「異様な雰囲気」を知っていて依頼したのか、依頼して撮ってみたら「異様な雰囲気」だったのか、それはわかりませんがとにかく嘘はありません。

この番組を通じて、多くの視聴者がNHKの依頼文でいう「低温世代といわれる若者たちのこころをどう動かすのか」を勉強させていただきました。また、「ワタミは氷山の一角だった」ということもわかりました。

どちらかというと、「居酒屋の素晴らしさや働くことの尊さなどを伝えられる」というNPO法人居酒屋甲子園の判断は、勘違いか勝手な期待だったように思います。

もしも、番組側が「居酒屋甲子園素敵ですね」「他の企業も真似しましょう」というような立ち位置だったとすると、それはもう異様を越えた異様になったと思います。だってこの番組、過去に「法律のグレーゾーン(裁量労働制)を狙って若者に過酷な労働を強いるブラック企業があります。もどかしいですね」みたいな特集もやってましたもん。

No.34032013年9月18日(水)放送
クローズアップ現代
拡大する“ブラック企業”~過酷な長時間労働~
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3403.html

ポエムはサービス業だけじゃない

サービス業ほどじゃないかもしれませんが、他の業界でもよく似たところは沢山ありますし、若者だけでなく、オッチャン達もポエム鼓舞されています。

営業が主役の会社では、未だに精神論重視の会社多いんじゃないでしょうか。

私が新卒で入社した、まぁまぁの規模のIT系企業では、「営業会議」で30代半ばの主任(♂)が泣かされていました。新卒の自分にとって、「営業会議」で営業の会議をせず、高圧的ポエム大会だったのは衝撃的。私はこの会議をきっかけに「この会社辞めよう」と思い、起業を決意し、脱出しました。4年ほど前の話です。

「成長」「やりがい」「仲間」・・・素敵なキーワードに、当時の自分のような夢見る若者は食いついてしまうのです。そして、多くの人は「ここを辞めると正社員は無い」と思い、身をささげてしまうのです。

家建てて子供がいるようなオッチャンはもっと過酷だと思います。ポエム的なものにすがるか、子供の写真持ち歩くかしないとやってられないんじゃないでしょうか。

もしも、離職率が激しい飲食業において、やる気を出させる様々な施策の発展形が「○○甲子園」なのだとしたら、離職率が高い他の業界も「○○甲子園」を開催したりしちゃうんでしょうか。

怖いがちょっと見てみたい気もします。(参加したくはない。)

居酒屋甲子園でポエム奮闘する若者

居酒屋甲子園をはじめとした○○甲子園で熱心にポエムを読んでいた彼らは、自分にはやはり異様に映り、友達になれそうにないなぁとは思いました。けれども、就職市場において、彼らは「必要とされる人間」の部類に入ると思います。

ブラック企業に長期間努めた人、ブラック企業で成果を残した人は、根性・忍耐・精神性という面ではやはり優れていますし、個人的な主観かもしれませんが、素直で真面目な人が多いようにも感じます。

彼らが「必要とされる人間」である理由は、ブラック・ホワイト問わず、多くの企業経営者や管理職の人が、甲子園で熱くなれるような素直でしゃかりき頑張る人を欲しているからです。

だって給料が低くても、仲間のために、自分の成長のために、身を粉にして頑張ってくれるんですよ?映像を見て「気持ち悪い」と言っている人もまた、そういう部下がいたらきっとすごく大歓迎だと思います。

もちろん、自分自身も、そんな部下がいたら有難いと思います。安月給で死ぬほど働かせたいと思っているわけでは決して無いですが、こんな風に熱く頑張る部下がいたら、そりゃもう助かるなぁという話です。

採用面接に来た人に、「居酒屋甲子園で優勝した経験あります」なんて言われたら、ちょっと頼もしいなぁと思っちゃいます。

そんな実情を踏まえると、「ポエム甲子園、気持ち悪いなぁ」と他人事として言葉をこぼせない自分がいます。

ポエムはいいけど、過労死や鬱は勘弁して欲しい

居酒屋甲子園等の○○甲子園は、「ポエムで心を動かしている」と指摘されつつも、実際に冷めた若者に夢や希望、やりがいを与えていることは間違いないと思います。そしてまた、若者も涙を流すほど熱くなり、やりがいや成長を感じ、懸命に頑張っていることも事実です。

「一種のカルトみたいなものだ!」という見方もありますが、仮にそうだとしても、カルトや宗教は人の心の隙間を埋め、生きる理由を生み出す役割を果たすため、第三者が簡単に口出ししたり批判したりできるようなものではありません。

実際、「居酒屋甲子園きもちわるい」「やりすぎ」と批判することはできても、安くて美味しくサービスたっぷりな居酒屋が大好きな私たちに、「居酒屋業界はこうすればいい」という、これといった対案はなかなか出せないのではないでしょうか。

ただ、私たちがこの業界に心底お願いしたいことは、過労死やうつ病患者を生み出さないで欲しいということです。ポエム作戦で若者を鼓舞するのは大いに結構ですが、「使い捨て」だけは辞めて欲しいです。

現実問題として、ブラックな労働環境問題を速やかに解決することはできないと思いますが、従業員の体調を気遣うことはできるはずです。

きっと多くの人が発する「居酒屋甲子園が気持ち悪い」という言葉の奥には「このようにして無茶な労働をさせ、労基法を自主的に破らせ、過労死や鬱病を生み出しているのか」という裏側を知ってしまった衝撃があるんだと思います。

勤めている会社がブラック企業だと愚痴る友人に、「じゃあ転職したら?もしくは起業したら?」と言って「みんながアンタみたいじゃない」と言われた自分には、ブラック企業に身を捧げてしまう「最近の若者」の気持ちがいまいちわからない部分も多くあります。

けれども、厳しい現実を生き抜くために現状を肯定しようとする気持ちや、将来への漠然とした不安の中で自分を信じることができるよう努力したい、何かに熱中したいという気持ちはよくわかります。

頑張ろうとしている人の気持ちを利用し、「使い捨て」することだけは絶対に辞めて欲しいです。

健康管理の面での改善はまだまだ可能なはずです。
というか、心持ち一つだと思います。

少し先の将来、居酒屋業界はハードな部分もあるが、1人1人がやりがいを見出し、会社や雇用主は、どんな業界よりもしっかり従業員の体調管理をしている、そんな風に言われるようになると素敵ですね。

夢や情熱だけでなく、体調管理・健康管理を謳うポエマーも登場して欲しいです。