貧困女子高生を救うのは自己責任論でなく教養。本当に批判されるべきは?

By b_kimura,

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TwitterやYouTubeコメント等で激しい批判が飛び交う貧困女子高生の問題。炎上の経緯と個人的な考えをまとめてみました。色々を書く前に先に言っておきたいことは、女子高生への激しいバッシングは何の意味もなく、ただの愚かな行為でしかないということです。まじで反省しろ馬鹿者め。

NHKの報道内容

問題となった番組は、8月18日放送の『NHKニュース7』の特集です。その映像はYouTubeで見ることもできます。

子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える

経済的な理由で進路の選択が難しい学生たちが、みずからの言葉で貧困の現状を訴えるイベントが18日横浜市で開かれ、学生たちは「子どもの貧困は日本にも存在していることを理解してほしい」と訴えました。

要点は次のような感じです。

・学生たちが企画したイベントが横浜市で開かれ、高校生や教職員などおよそ100人が参加した。
・イベント内容は、「子どもの貧困は日本にも存在する」ということを多くの人に知ってもらうことを目的としたもの。
・スピーチを行った高校3年生のうららさんは夢は、デザイン関係の仕事につくこと。専門学校への進学を希望していたが、入学金の50万円工面が難しく、進学を諦めた。
・うららさんは母親と2人暮らし。冷房はなく、夏はタオルに包んだ保冷剤を首に巻き、暑さをしのいでいる。
・パソコンを持っていなかったうららさんは、授業についていくことができなかった。そのことを見かねた母親が1,000円ほどのキーボードだけを買ってくれた。
・うららさんはスピーチで「お金という現実を目の前にしても諦めさせないでほしい、その人の努力に見合ったものが与えられて手にできる、そういう世界であってほしい」と訴えた。

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また、イベント開催前に「私で役に立てるならという思いで(この会議に)参加した」という思いを述べている点も見逃せないポイントです。

沢山の批判・バッシング

この報道は沢山の批判、バッシングを巻き起こしたわけですが、その矛先は、番組をつくったNHKへのもの、うららさん本人に向けてのものの、大きく2種類に分かれています。

NHKへの批判、バッシング

「貧困じゃない高校生を、貧困に仕立て上げている捏造番組」
「ろくに取材もせず、勝手に貧困と決めつけて報道」
「金持ちのNHK社員からすると、誰でも貧困」

受信料徴収問題への怒りも合わさっていて、感情的な批判も非常に多くなっています。

うららさんへの批判、バッシング

「嘘つき女」
「パソコンが買えないという前に、趣味のキャラクターグッズを買うな」
「貧困という割に、絵を書くための高額なペンを持っている」

批判ならまだしも、容姿をからかうような人格攻撃も多く、ただの悪口も多いのが現状です。

ちなみに、TwitterやYouTubeのコメント等、それがたとえ匿名でも誹謗中傷は犯罪です。容姿をからかうようなことを言うと侮辱罪です。ネット上に本当の意味での匿名はありません。(参考:Twitter匿名アカウントの個人特定可能に。悪口・誹謗中傷は名誉毀損で訴えられるかも。

認められる慰謝料は低額で、みんなやっているし取り締まられにくいという状況があったとしても、誹謗中傷が違法行為であることは確実であり、訴訟され、被告になるケースが無いというわけではありません。そうなった場合、色々を失うことは言うまでもないです。下のようなコメントをしている方には、時効成立の日(侮辱罪の公訴時効:1年後)まで訴訟に怯えて生きていってもらいたい次第です。

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彼女は夢を実現できないのか

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彼女が「貧困であるか」はひとまず置いておいて、まず「彼女の主張は間違っているか」という点を考えていみたいと思います。

「お金という現実を目の前にしても諦めさせないでほしい、その人の努力に見合ったものが与えられて手にできる、そういう世界であってほしい」

スピーチの結びの部分ですが、この想いは良くも悪くも高校生らしい素直な気持ちで、批判されるような内容ではないと思います。けれども彼女が「貧困=夢が実現できない」という風に捉えているなら、それは適切ではありません。

もちろん、どのような夢なのかにもよりますし、お金があると色々が有利であることは間違いありません。けれども、今回の「デザイン関係の仕事をしたい」という夢については、お金があまりなくても十分に実現可能です。

高卒でデザイン関連の仕事を探し、就職することもできますし、全く別の仕事をしながら自力で勉強して転職することもできます。自分で働いてお金を貯めて、行きたい学校に行くという選択肢もあります。「稼ぐ」という意味では難易度が高くなりますが、自力で勉強し、フリーランスで開業することも出来ます。

したがって、彼女が夢を実現できないのだとしたら、その理由は、貧困ではなく、教養の不足です。教養とは、社会を生き抜く知識・知恵であり、教養があれば、様々な選択肢・可能性に気付くこともできたはずです。

「教養の不足」と言っても、彼女が不足しているわけではなく、どちらかというと周囲の大人の方です。社会人経験の無い一般的な高校生がこのような問題に向き合うことは現実的に1人では困難であり、やはりこのような場合は、メンターとなる周囲の大人が肝になってきます。

ちなみに、「俺も貧乏だったけど出来た、君も頑張ればできる」「本人の努力が足りないだけ」という感じの自己責任論的な批判は全く的外れです。ブラック企業の馬鹿な上司が言いそうなセリフです。本人が「自分は努力が足りない、頑張ればもっとできる」と思うことはとても良いことなのですが、「社会」という視野で第三者が意見を述べるには不適切です。生存者バイアスがかかっているただの個人的な感想に過ぎません。

主張の本質

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「お金がないために専門学校への進学を諦めた」と聞くと、そのことに同情を抱かないことはないですが、では「全員が好きなタイミングで、好きな学校に行けるようになるべきか」と考えると、やはりそれでは現代の社会が成立しなくなります。有名な大学の附属高校や附属中学校に誰でも行けるわけではないのと同じです。

「職業選択の自由」は、生まれた環境に関わらず職業を選べる権利であり、農家に生まれた子供でも農家を継がずにミュージシャンを目指すこともできる自由のことです。「義務教育」は最低限の教育を受けることができる権利であり、教育の機関を自由に選べる権利ではありません。彼女の主張はとても抽象的なのですが、主張の論理を考えてみると、その内容は共産主義的な立ち位置からの現状への批判であり、かなり左側からの意見です。

多くの人が違和感を感じてしまうのは、彼女の主張に隠れたその論理や思想の部分であり、そして、彼女自身が政治的なことを考えているわけではもちろんなく、どうにも共産主義的な大人に利用されているように思える点にも嫌悪感を抱く人は多いのではないでしょうか。一部の過激な方のみかもしれませんが、小学生も容赦なく政治活動に巻き込む共産党の活動内容は、既に多くの人に知られています。

「親が死ぬ」「爆弾落ちる」 共産党運動員が小学生に安保法反対署名要求

路上で署名活動をしていた共産党の運動員が帰宅途中だった複数の児童に、「お父さんやお母さんが戦争で死んだら困るでしょ」「爆弾が落ちてきたら嫌でしょ」などと話しかけ、安全保障関連法案への反対署名を求めていたことが9日、分かった。
http://www.sankei.com/life/news/160610/lif1606100001-n1.html

番組内で、イベント開催前に彼女が「私で役に立てるならという思いで(この会議に)参加した」という思いを述べているシーンからも、彼女自身が貧困の問題に積極的に取り組んでいたわけで無いことは明らかです。イベントの企画者が「みんなのためにも出て欲しい」と、綺麗な言葉を並べて彼女に参加を促したそんな風景が想像できてしまいます。

「私で本当にいいんですか」「大丈夫です」

そんなやりとりもあったかもしれません。彼女への現在の厳しいバッシングは本来、イベントの企画者に向けられているものなのです。

企画者はいったい誰?

女子高生の情報はネットで色々と出てきますが、企画者の情報はあまり出てきません。せいぜい、このチラシくらいです。

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このチラシからはわかりませんが、主催団体は神奈川県次世代育成部子ども家庭課。民間の団体ではなく神奈川県の部署。写真のオジサンは神奈川県の知事です。けれども知事はあくまでビデオでのゲスト出演のような立場なので、企画者ではありません。企画をつくったのは神奈川県次世代育成部子ども家庭課にて行われている「かながわ子どもの貧困対策会議」です。

会議のメンバーは下記の通りです。

赤間 源太郎 (社会福祉法人 相模福祉村 理事長) 
飯田 弘 (神奈川県民生委員児童委員協議会 副会長)
金澤 信之 (県立田奈高等学校 総括教諭)
河本 真由美 (秦野市社会福祉協議会 生活支援班 班長)
近藤 康則 (神奈川労働局 職業安定課長)
高取 しづか (NPO法人 JAMネットワーク 代表)
高橋 温 (NPO法人 子どもセンターてんぽ 理事)
戸田 有紀 (NHK報道局 遊軍プロジェクト 記者)
冨江 里栄 (公募委員)
仲野 美幸 (葉山町 福祉部長)
平岩 多恵子 (藤沢市 子ども青少年部長)
矢部 雅文 (児童養護施設成光学園 施設長)
湯澤 直美 (立教大学 コミュニティ福祉学部 教授)
高校生代表
大学生代表

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p1048226.html

色々な方が参加されていますが、子どもが抱えている問題、貧困に関する問題に懸命に取り組まれている方ばかりです。極端な政治思想を持ち、それを普及させるような活動をしているような方はいません。唯一気になるのは、NHK報道局の戸田有紀氏です。戸田氏は今回の会議への参加だけでなく、炎上のきっかけとなった報道番組でもディレクターを務めています。

「戸田氏が仕組んだ捏造」「戸田氏が黒幕」といった声も挙がっています。

番組関係者が、自分たちの都合の良い結果になるよう、取材やドキュメンタリーを誘導していくことはよくあります。NHKに関わらず、番組作りは、「仮説→取材→結果」というシンプルなプロセスではなく、「仮説に合うように取材」というスタイルが横行しています。

けれども、今回のような会議・企画を一人の力で戸田氏が番組の都合に合うように誘導していくことは、とても困難です。一人で高校生を取材している企画ではなく、複数名の有識者による会議の元でのイベントであるためです。誰か一人くらいストップをかける人がいてもおかしくないでしょう。

「戸田氏が仕組んだ捏造」であったとしても、会議出席者の中で誰一人として今回の炎上を予想できなかった点は、会議全体の反省点であると言えます。

「NHKが取材に来てくれる」「NHKで報道してくれる」「自分たちの取り組みが多くの人に知ってもらえる」会議全体が、そんな思いに浮き足立っていた感が否めません。

彼女が貧困の問題を主張するにふさわしい人物であったか、彼女の主張を聞いた多くの人がどのような感想を抱くか、事前に検討する機会を設けることは出来たはずです。会議の出席者の多くは日々、子どものことを真剣に考えているいろいろな活動に取り組んでいる方達だと思います。だからこそ、今回の事態を重く受け止めて大いに反省すべきだと思います。

これほどまでに彼女への様々な批判や個人攻撃が激化している中、会議出席者の誰もが「私たちに責任があります」と声明を未だに出さない点は疑問で仕方がありません。

うららさんは貧困なのか

番組への最も多いと思われる批判の内容は「その女子高生は貧困ではない」という類のものです。貧困の定義は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があり、多くの人が貧困という言葉から想像するのは、衣食住の確保が難しく、生死に関わる問題を抱えている「絶対的貧困」の方です。

うららさんは母親と2人暮らしで、母親のアルバイトによって家計が支えられているとのことなので、「相対的貧困」にはギリギリ該当するかしないか、というくらいだと思います。

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